【概要】
拒食症とは、太ることに対して過剰に恐れることから過度の食事制限を行い、極度のレベルにまで体重減少を来すようになった状態を指します。神経性食欲不振症とも呼ばれ、摂食障害の一つに分類される病気です。拒食症は家族関係において何かしらの問題があり、コミュニケーションがうまく取れていない環境で発症することあります。もしくは、体重減少と言うことを通して自身の抱える何かしらの問題を表現していることもあります。
先進国における神経性食欲不振症の患者さんは、思春期~青年期女性の間でおおよそ1%と報告されています。1998年に全国の医療施設(23,401施設)を対象に実施した疫学調査によると、患者推定数(罹患率)は神経性食欲不振症が12,500人(人口10万対10.0)でした。現在はさらに増加していると考えられます。
体重減少の程度は著しいのですが、本人は比較的活動的であることも多いです。しかし、身体的な異常を来しやすい状況とも言え、一定レベルのラインを超えて体重減少が生じると、生命の危機にも瀕することのある疾患です。
治療は無理に食事を食べさせると言うことは奏功せず、根本治療のためには家族関係を含む周囲の環境に対しての介入も求められることのある疾患です。
【症状】
拒食症では過度の体重減少を見ることになります。体重減少の程度は、標準体重に比べてどの程度下回っているという指標で図られます。また食行動の異常を示すこともあり、隠れ食いや食べたものを後から吐くといった行動を呈することもあります。体重増加に対しての恐怖感をもったり、客観的にはやせているにも関わらず、まだやせていないと感じたりすることもあります。女性であれば生理がこなくなることも稀ではありません。
食事摂取が適切になされてない状況では、血圧や体温も低めとなります。その他、各種臓器の機能障害も生じてきます。循環器・呼吸器系、肝機能障害、血液系(白血球が極端に減少し、低血圧・貧血を起こす)、消化器系(胃がものを消化しない状態が長く続いたため、消化器系の運動機能が著しく低下する)、筋力低下・骨折所見、皮膚症状(寒さから身を守るため、背中などに産毛が密集して生えてくる)、内分泌・代謝系(無月経になる)、腎・泌尿器系(尿・汗が出ない)、唾液腺・口腔内所見など、身体的な症状も全身に及んでいきます。
身体の悲鳴とは裏腹に、拒食症の方では活動度が高いことも多いです。しかし、生命の基本的な維持すら出来ないほどの状況になることも稀ではなく、死亡率は6-20%にもおよぶと報告されています。
【原因】
拒食症の原因は、社会的要因・文化的要因・心理的要因・家族、家庭環境・生物学的要因など、様々な要因が複雑に関与しています。
拒食症になりやすい方は家族関係のコミュニケーションに問題を抱えていたり、状況変化や受けたストレスを適切に処理できなかったりという特徴があります。やせることを通して、うまく表現できない自身の気持ちを間接的に表現し、周囲の方へ助けを求めている状況ともいえます。
また、拒食症になりやすい人には、性格的な特徴を見ることもあります。「まじめで頭が良く、努力家」の方では、体重減少に向けての努力を着々と実行することになります。さらに自身の目的である体重減少が目に見える成果として満足感を得ることになり、さらに体重減少に向けての努力にいそしむことになります。その結果、ダイエットに深くのめり込み、体重減少を維持することでの達成感を感じることになります。
【治療】
定期的(週に一回程度)に体重を測るとともに、薬物や精神療法、場合によっては栄養補給剤などを用いて治療します。拒食症は心理的な不安を抱えていることが多く、体重減少を通して周囲の人の助けを得ようとしています。そのため、自力での努力のみで治療が完了する訳ではなく、家族の理解と協力も神経性食欲不振症の治療には不可欠です。特に家庭環境不全のなかで育った患者さんは、自分が病気になることにより自らの問題を抱えた家庭環境を具現化しているとも言われています。
また、鍼灸治療では、
自律神経を整え、「気」や「血」のめぐりを改善させていきます。
また、食生活の乱れによって弱った胃腸をケアするツボを使用し、「気」や「血」の源となる食事をきちんと摂れるようにしていきます。
「気」や「血」が整えば、「こころ」も徐々に整ってきます。「こころ」の状態が整い、「こころ」が元気になれば、身体の調子も整ってきます