【概要】
歯ぎしりや噛みしめは無意識に行っている人がほとんどで、睡眠中の歯ぎしりは一緒に寝ている人や暮らしている人の指摘で症状に気付くことが多いです。これは歯を噛みしめる力が強い場合に歯ぎしりをした音が周りに聞こえるためです。
しかし、実際は睡眠中の歯ぎしりは音を立てていない人の方が多く、音が出ないタイプも含めると日本人の約7割もの人が歯ぎしりをしているとも言われています。
通常、上下の歯の間には2mmくらいの隙間が空くのが安静時の正常な状態であり、一日の間で上下の歯の接触は生理的範囲で約17分といわれています。人間の噛む力は40~60kgと自分の体重ほどもあり歯ぎしりや噛みしめはその頻度や強さ、持続時間によっては歯や身体の病気の原因になります。
【原因】
歯ぎしりの原因は詳しくは解明されていませんが、メンタリティが関わってる場合が多いと言われており不安、緊張、心配などのストレス、遺伝や飲酒、喫煙、カフェイン摂取、交感神経活動の亢進、服薬、かみ合わせなどの関与が指摘されています。
歯ぎしりは浅い眠りの時に起こることが分かっています。
人間は深い眠りと浅い眠りを交互に繰り返しており、深い眠りの時には筋肉の動きは抑制されています。(副交感神経の亢進、交感神経の低下)
そして眠りが浅くなるとその抑制が解け(交感神経の亢進、副交感神経の低下)、その拍子に咬筋(頬の筋肉)が動き、歯ぎしりが起こると考えられています。
飲酒、喫煙、カフェイン摂取、ストレスなどは睡眠を浅くする要因であり、特にストレスは歯ぎしりの7~10%に関与していると考えられています。また、特定の遺伝子型の人は他の人の約5%歯ぎしりをしやすいことが分かっています。また、睡眠時無呼吸症候群、逆流性食道炎などの疾患も眠りが浅くなるため歯ぎしりが起こりやすいといわれています。
【症状】
・歯が擦り減る、割れる
歯ぎしりによって歯に非常に大きな力がかかります。個人差はあれど歯ぎしりの力は、ガムを噛む力の数倍~10倍といわれており大きな力がかかり続ける事で上下の歯が擦り減ってしまいます。
歯が擦り減るとエナメル質が破壊されて知覚過敏を起こします。また、詰め物が取れたり壊れたり、歯そのものが欠けたり割れたりする場合もあります。
・歯周病が発症、進行する
歯ぎしりによる過剰な力は、歯だけでなく歯茎にもダメージを与えます。歯茎が弱ると歯周病菌が繁殖しやすくなり、歯周病が発症、進行するリスクが高まります。
・歯の位置が移動する、歯並びが変化する
歯と歯が強く擦れあったりぶつかり合ったりすると歯が揺れ動きやすくなるため歯並びが悪くなったり、歯の位置が動くことがあります。
・顎関節症の発症
歯ぎしりをすることで、顎の関節や筋肉に負担がかかり、顎関節症を発症することがあります。
顎関節症に対する鍼灸治療
・咬筋(顎のえらの部分)の肥大
咀嚼筋である咬筋に強い負荷がかかることで、咬筋の緊張状態が続くと咬筋が発達し肥大することがあります。
・その他
顎の痛みや疲労感、肩こり、頭痛、めまい、耳鳴り、睡眠障害など様々な二次障害が歯ぎしりによって引き起こされているといわれています。
【鍼灸治療】
自律神経は交感神経、副交感神経の二つに分けられ、交感神経は日中活動時に活発に働く神経で、副交感神経は夕方から夜にかけて優位に働くリラックス神経です。この二つの神経がバランスをとりながら無意識下で全身の器官を調整しています。ストレスや疲労、生活習慣の乱れなどからこのバランスが乱れると心身の不調をきたす原因になります。
自律神経は睡眠の質や筋肉の緊張にも大きく関わっており、特に交感神経の過亢進は精神の緊張、全身的な筋緊張を招きます。
そのため自律神経系のバランスを整えるツボや東洋医学的観点から肝、心に関わるツボに刺激を与えます。
また、歯ぎしりや噛みしめ影響による顎や首や肩の筋肉の過緊張を除き、顎関節へかかる負担を軽減する治療を行います。